2019年10月に「介護職員等特定処遇改善加算」が創設

2019.2.13

 2019年度の介護報酬改定において、「さらなる処遇改善」として創設される新加算の名称が「介護職員等特定処遇改善加算」に決まりました。同加算は経験・技能のある介護職員などの賃金を他産業と遜色ない水準に高めることを目的に、現行の介護職員処遇改善加算に上乗せするもので、介護職員以外の職種にも一定程度の配分が可能な点などが特徴です。その概要が2月13日開催された第168回社会保障審議会・介護給付費分科会で明らかになりました。

 特定処遇改善加算は介護職員処遇改善加算と同様、サービスごとに加算率が設けられています。加算(Ⅰ)の加算率は、例えば訪問介護で6.3%、通所介護で1.2%、介護老人福祉施設で2.7%などとなっています。加算(Ⅰ)を算定できるのは、加算の取得要件(後述)を満たした上で、介護老人福祉施設は日常生活継続支援加算、通所介護や通所リハビリテーションなどはサービス提供体制加算(同加算(Ⅰ)イなど最も高い区分)の算定が要件となっています。

 特定処遇改善加算の取得要件は、(1)現行の介護職員処遇改善加算(Ⅰ)~(Ⅲ)を取得、介護職員処遇改善加算の職場環境等要件に関して、複数の取り組みを実施、(3)処遇改善加算に基づく取り組みについて、ホームページなどに掲載、などがあります。

 

 さらに、職種間の配分などの要件として、(4)介護福祉士であって、経験・技能を有する介護職員のうち1人は、月8万円以上の賃金改善または改善後の賃金が年440万円以上、(5)経験・技能を有する介護職員の賃金改善見込み額の平均が、一般の介護職員(経験・技能を有する介護職員以外の介護職員)の賃金改善見込み額の平均の2倍以上、(6)一般の介護職員の賃金改善見込額の平均が、介護職員以外の職員(理学療法士等)の賃金改善見込額の2倍以上、(7)介護職員以外の職員の賃金改善後の賃金が440万円を上回らないこと、などがあります。

 特定処遇改善加算における各サービスの加算率の設定に当たっては、「年2000億円の原資を勤続10年以上の介護福祉士の賃金が月8万円相当アップできるように配分した場合」を根拠にしています。当初は「勤続10年以上の介護福祉士に月8万円相当の処遇改善を行う」という「新しい政策パッケージ」の内容から「勤続10年以上の職員だけが対象」となる可能性もありましたが、実際には厳密な要件として設けられるのではなく、配分する職員の勤続年数などは事業所の裁量で比較的柔軟に運用できることになっています。

【関連リンク】

 第168回社会保障審議会・介護給付費分科会(2019年2月13日)資料


2019年10月の消費増税に伴い、介護報酬は0.39%引き上げ

2018.12.17

 2019年10月の消費税10%への引き上げに伴い、2019年度介護報酬は0.39%引き上げされることになりました。増税で経費が増える分を補填するために基本報酬などを引き上げることが主目的ですが、介護事業者に注目されているのが、増収分の財源のうち2000億円(公費1000億円程度)を用いて行われる、介護職員などの「新しい処遇改善加算」です。

 新しい処遇改善加算は、介護職と他職種との賃金差を縮めて、介護人材の確保や定着につなげる狙いがあります。従来の介護職員処遇改善(Ⅰ)~(Ⅲ)を取得している事業所が算定でき、別の新加算として設けられます。特徴は大きく二つあります。一つは、「勤続10年以上の介護福祉士」を中心としたベテラン職員を評価する加算であること。もう一つは、「介護職員以外にも配分可能」である点です。従来の介護職員処遇改善加算の対象に含まれなかった看護職員、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士などのリハビリ職、生活相談員、介護支援専門員なども処遇改善の対象になります。

 新加算の算定は、まず、サービス種類ごとに介護職員処遇改善加算と同様に加算率を設定されますが、この加算率は各サービスにおける勤続10年以上の介護福祉士の数に応じて設けられます。さらに、各サービスの中で介護福祉士の割合が高い事業所を評価するために、加算率を2段階で設定し、高い加算率は、介護福祉士の配置割合が算定要件に含まれている既存の加算の算定を条件とします。例えば、訪問介護であれば特定事業所加算、特別養護老人ホームであれば日常生活継続支援加算、通所介護、介護老人保健施設などはサービス提供体制強化加算などです。

 

 加算収入は各事業所内で、①経験・技能のある介護職員、②ほかの介護職員、③その他の職種の順に配分しますが、配分には一定の傾斜を設定する必要があります。これは、制度の趣旨が介護職員の処遇改善にあるためです。

まず、①経験・技能のある介護職員の中に、月8万円相当の処遇改善となる者、あるいは改善後の賃金が年収440万円以上となる者を設定します。この「年収440万円以上」は役職者を除く全産業平均賃金以上という意味を持ちます。また、①経験・技能のある介護職員の平均の処遇改善額は、②ほかの介護職員の2倍以上とする必要があります。さらに、③その他の職種は、平均の処遇改善額が②ほかの介護職員の2分の1を上回らないこと、年収が既に440万円以上の③その他の職種の職員は支給対象に含まれないことが示されています。

 「新加算は柔軟な運用が可能なため、キャリアパスや人事・給与制度上の位置付け方も事業所によって千差万別になる可能性が高い。職員への説明も工夫しなければ不公平感を持つ者が出る恐れもある。新加算を今後の人材確保や定着にどう生かすか、介護事業者の力量が問われてくる。」介護事業者向けの人事・給与制度やキャリアパス作成を手がけるコンサルタントは、こう語っています。

 

【関連リンク】

  第166回社会保障審議会・介護給付費分科会(2018年12月12日)資料